資料室


2. 7. 3微量サンプルの分析

くし形電極上で可逆な活性種がレドックスサイクルしている状態では一方の電極で反 応した殆どの分子が他方の電極上で逆反応により元の状態に戻される。このため、電極 面積に比べて著しく溶液量が少ない場合でも、電気化学反応によるサンプル中の活性種濃度を変化させることなく安定に測定を行なうことができる。我々はくし形電極に参照電極、対向電極を集積化し、2ミリ角の微小な電気化学セルを作製した。参照電極は基板上に形成されたくし形電極以外の電極に銀をメッキして使用した。くし形電極セルをテフロンガスケットとガラス板を用いて容量1マイクロリットル以下の容量に薄層化した。

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図14. 前電解電位とストリッピングピークの関係
前電解電位を変化させて1μ mol/dm3 水溶性フェロセンを5分前電解した。
実線はシグモイド関数でのフィッテイング。

図15に微小くし形電気化学セルにより測定したサンプル量500nL のフェロセン誘導体溶液のボルタモグラムをサンプル溶液量が多い場合の結果と比較して示す。一方の電極にフェロセンの還元電位を印加しもう一方の電極を電位掃引した場合は図の様にサンプル量が極めて少なくても大きな定常状態電流が得られているが一方の電極のみを用いて測定を行なうと電流値は非常に小さく、この差はサンプル量が多いときに比較しより顕著である。この結果は一方の電極のみを測定に用いた場合、活性種が電気化学反応により急激に消費されることを示している。一方、2の電極を測定に使用し、レドックスサイクルが起こる様に独立に電位を印加すると、微小く し形電極は捕捉率が高いためフェロセン誘導体がG極で酸化後、すぐにC極で還元され還元体の消費が押さえられることが分かった。

 この微小くし形電極セルを電気化学酵素イムノアッセイの検出器として酵素反応の生 成物であるパラアミノフェノールの測定に使用した。その結果、マイクロリットル以下の試料量でも試料量が多い場合と同様の定量性が得られた。また、溶液量が少ないため短いインキュベーション時間(酵素反応時間)で測定可能時間に達することが分かっ た21

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図15. 微量サンプルのくし形電極上でのボルタモグラム

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