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電気化学測定に関するQ&A


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測定前の準備に関して

Q.電気化学測定装置を設置する際に気を付けることは何ですか?

A.電気化学測定は、小さな電極表面で起こる電子の動きをボルタモグラムで可視化します。その為、電気的なノイズの少ない環境に装置を設置し、使用する電源(コンセント)も三芯のアース(接地)付きの電源を使用してください。 安定した電源電圧を確保するため、UPS(無停電電源装置)を使用することも有効です。3芯のOAタップは、コンセント部分で緑色のアース線が浮いている事例が多数ありますのでご注意ください。


Q.電気的なノイズの多い環境にはどのようなケースがありますか?

A.以下のようなケースが考えられます。

  • 1. 接地(アース)不良
    • 確認点: 測定機器やPCが適切に接地されているか、接地線の断線・接続緩み・アースループが無いか
  • 2. 大型電動機材の近接
    • 確認点: 測定室や隣室に大型電動機材が無いか、稼働時のノイズ増大確認とシールドの検討
  • 3. 3相交流電源の100Vへの電源変換器・スイッチング電源
    • 確認点: 使用電源の種類、PC等のACアダプターや照明・空調設備からのノイズ発生が無いか

Q.作用電極には何を使えば良いですか?

A.一般的に多いのはガラス状カーボン(GC)電極や白金(Pt)電極となります。タンパク質などの生体サンプルの場合は金(Au)電極を使用する事もあります。


Q.作用電極の前処理(研磨)がベストな状態か確認する方法はありますか?

A.電子移動速度が速い酸化還元物質の代表例である フェリ/フェロシアン化カリウム のCV測定を行い、酸化還元ピークの電位差が 70 mV 以下(理想は 60 mV 台前半)ですと電極が綺麗に前処理されていると判断できます。


Q.測定前の参照電極の電位チェックはどうしたらよいですか?

A.ボルタモグラムの電位は使用する参照電極電位に依存するため、使用する参照電極が正しい電位を保持しているかチェックすることはとても重要です。チェックすべき参照電極と同タイプの新品参照電極を、支持電解質溶液(3M NaClや飽和KCl)の入った1つのセルに入れて電位差を確認します。
このセル内の参照電極は同じものですので、理想的には自然電位(OCV: Open Circuit Voltage)は 0 V になりますが、実際には個体差などにより多少の電位差が発生します。電極の電位差が 0±10 mV を超えたら新品への交換してください。


Q.測定液の前処理に溶存酸素の除去は必要ですか?

A.基本的には除酸素を行って下さい。また、酸化されやすい還元物質は溶存酸素により酸化される場合もあります。除去の際は純度の高い、窒素ガスやアルゴンガスを使用してください。サンプルのピークが酸素の還元ピークと重ならない場合など、測定に影響しない場合にはそのまま測定しても問題ありません。


Q.非水系で測定する場合の有機溶媒は何が良いですか?

A.まずは測定対象物がその溶媒に溶ける事に加え、支持電解質を溶かし、溶媒自体が測定に影響しないことが必要です。支持電解質をよく溶かし、よく解離する(誘電率が高い)溶媒として、アセトニトリル(AN)、ジメチルフォルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)があります。プロピレンカーボネート(PC)は、リチウムイオン電池の研究にも用いられます。


電気化学測定に関して

Q.ボルタモグラムにノイズが乗るのですが原因は何ですか?

A.測定時のノイズには様々な要因が有りますので、一つずつ下記の項目を確認してください。

  • 電源のアースはしっかりと取れているか?
  • 測定ケーブルが長すぎないか?
  • 近くに大きな電力を消費する装置は無いか?
  • 実験机に振動は無いか?
  • スターラーで攪拌を行っていないか?
  • 参照電極の液絡部(イオン透過性ガラスやセラミック)が目詰まりして抵抗が大きくないか?
  • ワニ口クリップが断線しかかっていないか?
  • µA 以下の微弱電流を測定する場合は、アースに繋がったファラデーケージ(導体でできた箱やかご)内で測定を行ってください。

Q.CV測定のピークの位置が測定毎に変わりますがなぜですか?

A.同じ測定溶液で測定の日によってピークの位置が左右に変わるのであれば、参照電極の電位が安定していない可能性があります。参照電極の電位チェックを行って下さい。CVの多重掃引の場合、電極表面の汚損や膜の生成によりピーク位置がシフトする事があります。なお、同じ酸化還元物質でも、使用する電極の種類、pHや支持電解質の種類によりピーク電位が異なることは多々あります。


Q.CV測定をすると不明のピークが出てきます。これは何でしょうか?

A.色々な要因が考えられます。まずは、除酸素を行った溶媒と支持電解質でバックグラウンド測定を行ってください。 酸素の還元ピークに該当すれば、-0.6 V ~ -0.2 V 付近に出現するブロードなピークが消えます。また、支持電解質に含まれる汚染物質(コンタミ)に由来するピークの可能性もあります。この場合、支持電解質の濃度を順次濃くして該当するピークが大きくなるかを確認してください。また水溶媒の場合、還元側で水素の発生、酸化側で酸素の発生という、いわゆる水の電気分解が起こります。水の分解が起こらない電位範囲に目的物質の酸化還元電位がある必要があります。測定可能な電位範囲(電位窓)は、電極種やpHにより異なります。


Q.CV測定を行った溶液は毎回交換しないといけませんか?

A.電解生成物が次の測定に影響する場合や、時間が経過すると変質する場合は溶液交換が必要になります。一方で電解生成物はセル全体の濃度にはほとんど影響しませんので、溶液が安定している場合や厳密な測定でない場合は、測定毎に交換する必要はありません。 


Q.参照電極を測定液にそのまま浸けても問題はないですか?

A.基本的には問題ないですが、参照電極が液絡部にイオン透過性ガラスを使用している場合、溶液のpHによっては溶けてしまうことがあります。強アルカリ性サンプルの場合は、液絡部にセラミックを使用したものや、専用のアルカリ酸化水銀電極を使用します。また、参照電極には液絡部が有るため、参照電極の内部液と測定サンプルが反応して不安定になることや、塩の析出等により液絡部が目詰まりして電位の安定性に影響する場合があります。この問題は、定期的にメンテナンスを行うこと、同種類の新品参照電極との電位差を確認することが重要です。


Q.参照電極は高温に加熱しても大丈夫ですか?

A.恐縮ながらビー・エー・エスの電極を常温以外でご利用頂く場合、弊社での動作保証は致しかねます。参照電極の内部液や各種電極素材の劣化などにより、動作に問題が生じる可能性が高くなるためです。もしお客様の判断にてご利用になる場合は、塩橋やダブルジャンクションチャンバーを用いて高温の測定液から参照電極本体を隔離するなどの対策をお勧めいたします。また、参照電極の電位は温度にも影響を受けますので、ご注意下さい。


Q.参照電極の液絡部(イオン透過性ガラスやセラミック)が着色しましたが使用できますか?

A.着色しても、参照電極の電位のシフトが無ければそのままご使用いただけます。気になる場合は、新しい参照電極との電位差を測定してください。電位シフトがある場合は、目詰まりによりイオンの移動が妨げられている可能性があるため、参照電極を交換してください。


Q.カウンター電極での反応は無視しても大丈夫ですか?

A.電気化学分析に於ける3電極測定では作用電極の反応のみをモニタリングしますので、基本無視して頂いて結構です。ただし、長時間の電解重合などカウンター電極での電解生成物が作用電極での目的反応に影響を及ぼす場合は注意が必要です。このような場合は、ガラスフィルターなどでカウンター電極を隔離する場合があります。


測定終了後

Q.作用電極の保管方法はどうしたらよいですか?

A.作用電極を使用後は、蒸留水や使用した有機溶媒で表面に付着したサンプル液を洗い流してから、アルミナ研磨パッドで研磨を行ってください。研磨後は、蒸留水で十分にすすぎ、常温で風乾してください。加熱して乾燥させることは電極を劣化させるので行わないでください。


Q.参照電極の保管方法はどうしたらよいですか?

A.作用電極と同じく、蒸留水や使用した溶媒で表面に付着したサンプル液を洗い流し、参照電極先端のイオン透過性ガラスやセラミックの液絡部分が乾かないよう、適切な保存液に浸けて冷暗所に保管してください。保存の際は、RE-PV 参照電極保存ビンをご使用いただくと便利です。長期間の保管の際は、定期的に保存液を交換し、電位のチェックを行ってください。


Q.電極の研磨パッドの保管と交換の目安はどれくらいですか?

A.ビー・エー・エスで販売している各種研磨剤は、蒸留水にアルミナやダイヤモンドの粉末を混ぜた物になりますので、使用後はそのまま乾燥させて頂いて問題ございません。次に使用する際は、蒸留水で少し湿らせて研磨剤を適量(5滴程度)滴下してください。アルミナ研磨パッドの表面は柔らかい起毛の様になっていますが、何度が使用して作用電極の研磨効果が低下したら交換してください。


Q.電気化学セルなどのガラス製品の洗浄はどうしたらよいですか?

A.廃液処理を適切に行った後、流水や溶媒で汚れを洗い流してください。その後、中性洗剤でブラシを用いてしっかりと洗い、水洗いした後に蒸留水やイオン交換水で洗い乾燥させてください。イオン交換水で洗うと不純物の付着が軽減できます。



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