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電気化学測定法である電気化学インピーダンス分光法(EIS)についての基礎的な内容です。
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電気化学インピーダンス分光法(EIS)について(8):有限拡散

前回はネルンスト拡散(ND)について触れました。もう1つの有限拡散(FD、finite diffusion)の場合はどうなるか。理論式は次式のようになります。

電気化学 測定 有限拡散(FD、finite  diffusion)の理論式

前回のNDとよく似た式ですが、関数がtanh からcothへの違いがあります。Randles回路にワールブルグインピーダンスを加えた等価回路(拡張Randles回路)のワールブルグインピーダンスの部分をFDで置き換えるとFDの等価回路になるわけです。

この等価回路についてのシミュレーション結果が図1です。電荷移動抵抗(Rct)、二重層容量(Cdl)、有限膜厚δ、拡散係数、濃度は図中に示してありますが、溶液抵抗はゼロとしています。溶液抵抗は当然あるのですが、その分だけ、実軸がシフトするだけですので省きました。電荷移動過程の半円に続いて、ある長さの45度勾配の直線を経て低周波数域で実軸に垂直に立ち上がるものです。有限膜の厚さδを薄くすると45度の直線は短くなります。
電気化学 測定 図1.有限拡散電荷移動の場合のナイキストプロット

分かり易い実例として1個のカーボン球電極へのリチウムのインターカレーションの場合をあげましょう1)。図2のような30µ径のカーボンビーズからなる電極を1MLiClO4/プロピレンカーボネート+エチレンカーボネート(1:1)中でLi/Li+の電位に対して0.01-0.6 Vの間を1 mV/sの電位掃引を3回繰り返した後、0.3 Vに固定してEIS測定でえられたナイキストプロットが図3です。
図1のシミュレーションとよく似ていることがお分かりいただけるでしょう。限られた量の活性種や、リチウムイオンのインターカレーション-デインターカレーションのように移動範囲が限られた場合に見られるナイキストプロットではしばしば現れるものです。少々難解ですが、理論的背景を詳述してある類似の関連文献もあげました2-3)

1)Uchida et al., Electrochimica Acta 47, 885 (2001)
2)J. Newman et al., J. Electrochem. Soc. 147 2930 (2000)
3)M.D. Levi et al., J. Phys. Chem. B 108, 11693 (2004)
電気化学 測定 図1.有限拡散電荷移動の場合のナイキストプロット

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